「社内不倫」――ドラマや小説の中だけの話だと思われがちですが、実際には意外と身近に起きていることです。
同じ職場で長い時間を過ごすからこそ、互いの苦労を分かち合い、弱みを打ち明け合い、気づけば踏み込んではいけない関係になってしまう。誰にでも起こり得る“身近な落とし穴”なのです。
今回は、外資系IT企業で働くバリキャリ女性・Mさん(当時30歳)が、自らの過ちと向き合い、離婚と再スタートに至るまでを綴った体験談です。
29歳で結婚し、優しい夫と穏やかに暮らすはずだった彼女が、なぜ社内の既婚先輩と不倫に陥ってしまったのか――。
そこには、レスや夫婦間の価値観のズレ、そして禁断の関係に燃えてしまう人間の弱さがありました。
ここからは、Mさんご自身の言葉で、その心の軌跡を語っていただきます。
幸せなはずだった結婚生活

私は29歳のとき、アプリで知り合った4歳年上の理系コンサルの男性と結婚しました。
彼は知的で誠実。ただ、特別イケメンというわけでもなく、29歳という年齢もあって「そろそろ結婚したい」という気持ちも背中を押しました。
最初の1年ほどはそれなりにうまくやっていましたが、だんだんと会話の中でのロジック押しや、潜在的な男尊女卑の感覚が見え隠れするようになりました。
「俺は仕事が遅いから、家事はお願いね」――そんな言葉に、次第に小さな苛立ちが積み重なっていったのです。
やがて夫婦関係はレスに。私は夜遅くまで仕事をしても、家事は当然のように私が担当。結婚生活に窮屈さを覚え始めていました。
禁断の始まり

30歳になった頃、私は職場の先輩であるKさんと自然に距離を縮めるようになりました。彼も既婚者。部署は違いましたがプロジェクトで関わることが多く、話す機会が増えていったのです。
チーム全体での飲み会では、なぜかKさんと席が近くなることが多く、気づけば隣に座っている――そんなことが重なりました。
彼は人当たりが良く、場の空気を和ませるのが上手で、話しかけやすい雰囲気を持っていました。仕事の相談をすれば真剣に聞いてくれるし、冗談も交えて返してくれる。そんなやり取りが、忙しく張り詰めていた私の心を少しずつ解きほぐしていきました。
ある日、チームの飲み会が盛り上がり、2次会、3次会と流れていきました。終電のことも気にせず、気づけば深夜。
そのとき、Kさんがふと真顔になり、「実は、家があまりうまくいっていないんだ」と打ち明けてきたのです。
私も思わず夫への不満を口にしていました。
「うちも最近は会話も減ってきて、私ばかり家事をするのが当たり前みたいで……」
その瞬間、二人の間にあった見えない壁がすっと消えました。
「お互い、大変だよな」――そう言い合った一言が、妙に胸に響いたのです。
それから二人で仕事終わりに飲みに行くのが当たり前になり、「ちょっと一杯だけ」と言いつつ、終電ギリギリまで語り合う。
安心感がやがて危うい方向へ傾いていくことを、この時の私はまだ分かっていませんでした。
一線を越えた夜

何度目かの飲みの帰りでした。
店を出ると、夜風が酔いを冷ますはずなのに、胸のざわつきは強くなるばかり。人通りの少ない道で、Kさんがふいに立ち止まりました。
「……正直、もっと一緒にいたい」
理性は「これはダメだ」と叫んでいるのに、心は止められませんでした。
気づけば、その夜、私たちは一線を越えてしまったのです。
「これは間違いだ」と頭では分かっている。
でも、久しく感じていなかった“女性として求められる”という感覚に、全身が震えるような高揚感を覚えました。
罪悪感と快楽が同時に胸を突き抜け、私は取り返しのつかない世界に足を踏み入れたことを理解しました。
噂と高まる本気の気持ち

半年が過ぎた頃から、社内でちらほらと噂が立ち始めました。
「最近、あの二人よく一緒にいるよね」
「また飲みに行ってたみたいだよ」
同僚の何気ない雑談に自分とKさんの名前が並ぶたび、心臓を鷲掴みにされるような恐怖を覚えました。
「バレたらどうしよう」「仕事も夫もすべてを失ってしまうかもしれない」――そう頭では理解しているのに、それでも離れることができませんでした。
久しぶりの恋愛感覚
Kさんとの時間は、まるで久しぶりに恋をしているようでした。
LINEの通知に胸が高鳴り、飲みに行く日は一日中ソワソワする。
社内ですれ違うときに交わす笑みや、肩が触れ合うだけで頬が熱くなる。
一方の夫にはもう心が動かず、会話も最低限。
優しいけれど上から目線な態度。
その反対にKさんは私の話を丁寧に聞き、「君は頑張ってる」と労ってくれる。
それは女としての自分を思い出させる言葉でした。
四面楚歌の孤独
しかし、この関係を誰にも打ち明けられませんでした。
友達に話せば軽蔑される。親には言えるはずがない。職場ではもちろん秘密。
Kさんとの時間だけが救いであり、同時に孤独の沼でもありました。
「彼さえいれば」と思う一方で、失う恐怖にも怯える。
完全に四面楚歌の中で、心は張り裂けそうになっていました。
辛くて苦しかった夜

Kさんとの関係が深まる一方で、私は限界に近づいていました。
家に帰れば夫はいつも優しく「お疲れさま」と迎えてくれる。
その笑顔を見るたびに罪悪感で胸が締め付けられ、ベッドで涙が止まらない夜もありました。
「誰かに聞いてほしい」「でも誰にも言えない」――この矛盾が私を追い詰め続けていたのです。
電話の向こうの救い

藁にもすがる思いで辿り着いたのが「オンライン占い」でした。
震える声で占い師にすべてを告白しました。
「職場の先輩と不倫しています。夫とはうまくいかず、罪悪感で押し潰されそうなんです」
先生は驚くことも責めることもなく、静かに耳を傾けてくれました。
「あなたが彼に惹かれたのは、満たされない部分を埋めてもらえたから。異常なことではありません」
その言葉に涙があふれました。
否定されると思っていたのに、感情そのものを認めてもらえたのです。
ただ先生は続けました。
「このままでは必ずリスクが大きくなります。本当に大事なものは何なのか、冷静に考えてください」
その助言で、私は少しずつ冷静さを取り戻していきました。

離婚の夜 ― 感情のぶつかり合い

離婚の話を切り出した夜、私と元夫はリビングのテーブルを挟んで座っていました。
テレビも消え、時計の秒針だけが響く。
「……私、もう無理だと思う」
震える声でそう告げると、元夫は深く息を吐いて言いました。
「理由は、何だ?」
「会話をしててもロジックで押し込まれるだけで、私の気持ちが否定される。
家事も全部私がやるのが当然みたいになっていて……もう、耐えられない」
元夫は声を荒げました。
「そんなのどこの夫婦も同じだろ!」
私も言い返しました。
「同じじゃない!私は幸せを感じられないの!」
沈黙の後、元夫は呟くように言いました。
「……もう気持ちが俺にないんだな」
私は涙をこらえながら頷くしかありませんでした。
離婚届に印鑑を押した瞬間、赤い印影がにじみ、視界がぼやけました。
その夜、愛情よりも疲労と諦めの方が勝り、二人の関係は終わりを迎えました。
離婚直後 ― 喪失感と解放感の狭間で

離婚届を提出した帰り道、胸の奥から何かが抜け落ちた感覚とともに涙が溢れました。
「私、本当に一人になっちゃったんだ……」
広いベッドの空白が心を突き刺し、喪失感が押し寄せる。
それでも一方で、自由になった解放感も確かにありました。
「ロジックで否定される会話」も「家事の押しつけ」もない生活。
その二つの感情に揺れながらも、時間だけが過ぎていきました。
転職と再スタート
環境を変えるために転職を決意。新しい会社で働き始めた時、まるで新しい空気を吸い込んだような清々しさを覚えました。
仕事に打ち込みながら「自分の人生を取り戻している」と感じられるようになり、やがて紹介で知り合った男性と新しい恋も始まりました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は職場不倫にハマってしまった既婚女性のリアルな体験談を追っていきました。社内不倫にのめり込み、離婚を経てMさんはようやく「自分を押し殺す結婚生活では幸せになれない」と気づきました。背徳感と罪悪感に支配された半年間は苦しくもありましたが、そこから学んだのは「正直に生きる勇気」です。転職し、新しい出会いを得た今、Mさんはもう一度自分らしい人生を歩み始めています。同じような境遇の方の参考になれば幸いです。
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